【研修報告】ピアサポート研修(専門)に行って気付いた発達障害の困りごと
こんにちは。支援員の宮崎です。
8月に行われた大阪府のピアサポート研修(基礎研修)に引き続き、10月24日、25日に後半戦の専門研修に参加してきました。
前回の基礎研修を踏まえて今回同じメンバーでの専門研修だったのですが、そこでは自分自身について改めて考えさせられる出来事がありました。
10月当初はまだ上手く頭の整理が付かず時間がかかってしまったのですが、一緒に行っていた管理者の高木さんに沢山言語化を手伝ってもらって、今回感じたことを言語化することが出来ました。
今回もまた備忘録として書いていきますので、ぜひ読んでみてください。
Contents
演習で起きた発達障害案件
専門研修2日目の、午後のグループ演習でとてもモヤモヤすることが起きました。
演習は「ピアサポーターがいる時にチームワークが発揮されるためにはどんな工夫が必要ですか?」というテーマを話し合う回だったのですが、基礎・専門と4日間で言語化できないモヤモヤが積もっていたからでしょうか、パッとこの問いを見て違和感を覚えたのです。
これってピアサポーターがいたら、工夫しないとチームワークが発揮できないってこと?
チーム医療なら、嚥下の専門家が入ってくれたら、工夫も何も「助かるー!」って感じで何の工夫もいらない気がするけど…
ピアサポーターはそのチームに入るだけじゃ役に立たんから工夫が必要ってことなのかなぁ?
チームにピアがおるかどうかでチームにおける何かが変わるの?
そんなモヤモヤが頭の中でぐるぐるしていて、手が止まってしまいました。
そんな時、ファシリテーターさんが声をかけてくださりお話をしたのですが、お話を聞いて申し訳ないことに更にモヤモヤしてしまいました。「私の聞きたいことはそんなことじゃないんだけどなぁ…」という言葉が出かかりましたが、飲み込んでしまいました。
私が大きな声で話していたからか講師の方も来てくださったのですが、私の困りごとに対し「もしその医療チームにピアがいたらどうする?」と聞かれ、さらに戸惑ってしまいました。
医療にピアは見たことない…末期がんのピアです、天国は良いところですよーって支援なんてするー!?(流石に喧嘩を売るような文言になってしまいそうで言えませんでしたが汗)
全然理解しない私を横目に、同じテーブルにいた管理者の方が「あなたは恵まれてるから(分からないのよ)」とぴしゃり。
そこでとうとう私はフリーズしてしまいまして。時間もないし、ただその先輩方の解説で理解しないといけないんだろうなあ😅というプレッシャーを感じて分かったフリをして適当に流してしまいました。
本当はどうして欲しかった?
研修が終わった後もモヤモヤが残っていたので、管理者の高木さんにあったことを話しながら頭の中を整理していき、今回のグループ演習で私がモヤモヤしていたことは以下の2点だと分かりました。
①私が困っていた本当の意味を理解しないまま返答をされる
②「あなたの困りごとは私が解決できますよ」という圧を感じる
一度も「あなたの言ってることは●●●ってことで合ってる?」と確認はされませんでしたし、私の話を咀嚼するというより、「こういう意味で考えてみなよ!」とアドバイスをくれた感じで、例えるなら自分の持っている魚を捌けていないところに肉の塊が降ってきたような状況でした。
時間がないのは分かっている中で、それでも周りの先輩に頼ろうとして困りごとを話したのですが、それは元々あった1個のモヤに新たなモヤを貰って持ち帰ることに繋がってしまいました。(分かってないのに「ありがとうございます。分かりました」と嘘を付いてしまったのも、病気の元ですね)
恐らく私はうるさかったのでしょう(笑)「あなたは恵まれてるから」というあまり福祉では聞かないフレーズを言わせてしまって場を凍らしてしまったのも反省材料です。
発達障害の困りごとを発信しなきゃいけない
私は発達障がいと診断されましたが、他の障がいの方と違ってどこも痛くないし、どこも動かない部位はないし、薬もいらないから通院もないし手帳も返してしまいました。勉強も良くできるので「軽めの恵まれた女の子」なのでしょう。
でも論理的な話でないと理解できないし、疑問があってもすぐに言語化出来ない。自分でもモヤモヤしていることを自覚しにくいから時差で気付いて後から凄く嫌な悔しい思いをする。感性が豊かでよく喋るから、察知してその場を取り繕えてしまう時は誰も苦しんでいることに気付かれないし、察知できず場を乱してしまう時はただの迷惑なやつになってしまう。
よく喋るのに言語化が遅い、軽い疑問はすぐ表出できるのに家に帰ってからしか肝心な疑問が出てこない、察知できることもあるのに気付けないこともある。周りに困っていることも認知されにくいどころか発達障害による困りごとだという認知もされにくい。
これこそが「見えない障害」なんだろうなと自分でも改めて気付かされました。
少なくとも今回は講師の方も、ファシリテーターの方も、同席していた管理者も私は「元気でうるさい若い子」程度で、研修後にこんな何日も悩んでいるとは思っていないのではないでしょうか。
私自身も「普通の人です」という顔をしているから良くない。もっと「こういう所で躓くんです」「今のあなたの話じゃ理解できません」と発信しなければいけなかったと後から反省しました。
配慮してほしい訳ではない
だからといって「配慮してほしい」「発達障害の権利擁護を!」と言いたいわけではありません。
ただ、こういった困りごとをしている人もいるということがもう少し広まったら良いと思う。
多分発達凸凹の大きい人は、普通に生きている人には見えないような部分で躓き、悩み、時間をかけて悩み事と向き合っている。
そこは「自分が解決してあげられますよ」というスタンスで来なくても良い。
もしかして自分の見えない範疇の世界で困ってるのかも?という仮説を持って接してくれる人が一人でも増えたら嬉しい。
残念ながら私のような困りごとを抱えている人は「福祉の人に話しても意味ない」と思っていることが多いです。
また適当なこと言われて、モヤが増えて、嘘ついて…を繰り返してしまうことになるから。
時には「ごめん、私じゃ解決できないわ」と言ってもらえた方が救われる時もあると知ってもらえたら嬉しい。
私たちは私たちで生きやすくなるように工夫する必要がある
ただし発達障害の人たちは人たちで、自分がどんなところで困っているか予め伝える工夫や、他者と上手く意思疎通できるようになる練習をしておく必要があると思っています。
例えば私であれば
□ なるべく早く疑問を言語化する練習をする/自分が躓くポイントを理解しておく
□ ADHD的喋り方を身に付ける(単語切り取って話してその場を切り抜ける処世術を)
□ 毎日のモヤは溜め込まずに、都度解消する癖を付けて体調を安定させる
こういった工夫をしながら生きる方法を身に付けています。
広まっていったら嬉しいと感じたこと
むやみなアドバイスや指導をしない
これはえさかで管理者の高木さんが健常の精神保健福祉士の職員によく言っていることなのですが、「利用者にむやみなアドバイスや解説をしない」ということをよく伝えています。
どうしても自分の見えている範囲、理解した範疇で話し出してしまう傾向があるので、そうじゃなくて利用者の見えている世界を知ろうとすること、本当に躓いているポイントがどこなのか一緒に探す感覚で話を聞き出しなさいと、これは私も意識しています。
健常者は60点で「分かった」と言い、発達障がいは85点で「分からない」と言う。60点の人が85点の人に「教えてあげる」のではなく「聞いていく」そこの支援が必要だと高木さんはよく言っています。
性格に対する言及をしない
「ピュアで沢山疑問を発信出来てさすがだね」「宮崎さんは努力が出来て凄いね」めちゃくちゃ言われるのですが、実は結構複雑な思いをしています。
だって片麻痺の人に「可愛い歩き方だね」って言わないでしょ?
足ない人に「歩き方素敵だね、沢山練習できて凄いね」って言わないでしょ?
知的障害の人に「知能が低い中で頑張って生きてて偉いね!」って言わないでしょ?
なぜか発達障害に対しては不問で、ポジティブな表現であれば思ったこと言いたい放題なきらいがありませんか?
見えない障害にも目を向ける意識を持ってほしい。他の人に目立つところってのは、本人も自分なりに凸凹の使い方に悩んでいて苦しんでいるところかもしれないと思ってもらえたら嬉しいです。
精神疾患の症状が、「考え方の障がい」由来だったりする
ADHDの人は脳の機能障害だからADHDの症状が出ている訳ではないことがあります。納得していないことがあったり理解できないことが積もっていくとパンクしてADHD様の症状が出現する方が非常に多く、納得できたり理解できることが増えると多動や不注意が落ち着いてくる…というケースは少なくありません。
これは統合失調症や双極性障害と診断された方も同じようなことが当てはまります。なにかパンクしていると、中途覚醒したり、ちょっと外食が増えたり、不安定になったり、うつの人は家から動けなくなったりしますが、パンクが解消されたら治ることが多いです。(私は医者じゃないので全ての症状がそうだと言えないですが…)
何かしらの変化が見られたときに単純な病気の症状だということでなく「何か解決できていないことでパンクしたのかも」「私たちには見えない範疇で悩みが積もっているのかも」と思ってもらえたら幸いです。
「病気を克服した人」として参加したけど…
今回のピアサポート研修では、どちらかというと「元」病人というスタンスで「発達障害と診断されはしたけど今は元気です」というテイストで参加しました。
でも、せっかくピアとして参加できる場面だったんだから、もう少し「発達障がい」についてしっかり準備して挑めば良かったと反省しました。
もちろん働けるようになったことやうつから元気になったことを強みにしていくことも大事ですが、福祉界隈の発達障害についての認知や対応の仕方を広めていく必要もあるのではないかと感じた次第です。
ピアサポート研修は今年で3回目だそうで、発達障害の方の実例報告もありませんでした。来年度以降は私が発達障害の当事者として、ピアサポーターに関わる人たちの意識を変えていく活動がしていきたいなと強く思いました。