働けない人の3つの共通点~発達凸凹の就労のリアル~
おはようございます。支援員の宮崎です。
先月26日にゆう・きっずさんの学習会の講師として高木が呼ばれまして「発達凸凹の就労のリアル」ということで、凸凹の強い人たちの就労について話してくる機会がありました。
その時にレジュメとして書いた内容があったのですが、レジュメとして終わらせたらもったいない!ということでブログにして公開します。
Contents
凸凹の有無に関わらず、働ける子と働けない子がいる
私たちの見ている限り、同じ障がい・凸凹でも働ける子と働けない子がいます。働ける子はどんな雇用形態・就職先・職種でも働き続けることが出来ます。一方で働けない子はどれだけ優秀な学歴で有能な資格を持っていても、どれだけホワイト企業で手厚いサポートがあっても、働き続けることが出来ません。つまり働けるか否かは職場環境や労働条件ではないと言って良いと感じています。では、働ける子と働けない子では何が異なるのでしょうか?
働けない子の共通点
私たちが日々支援している中で、働けないタイプの人に共通することを3点挙げてみました。
「働くこと」を理解していない
1点目は「働くこと」をそもそも知らないということです。働くとは漢字を見ると「人のために動くこと」と表現されますが、具体的には「自分がやりたいことを相手に提供することで、ありがとうと言ってもらえる&役に立つ喜びを感じる&お金が付いてくる」という一石四鳥のメリットが得られる活動です。しかし仕事を「お金を貰うために嫌なことをすること」だと誤解している人が少なくありません。そう思っていると労働は非常に効率の悪い選択になってしまい、働くことへのハードルが高くなってしまうのです。特に今の子は衣食住にも困らず、親に言えば何でも手に入る時代ですので、尚更働く気が起きないでしょう。また父親の嫌々働いている様子や母親の家事に対する不満げな様子は、子どもたちに「働くことは損なこと」という歪んだ認知を植え付け、安定した就労から遠ざけることに繋がっています。
提供する側になる「やる気」の準備が出来ていない
2点目は「やる気」の準備が出来ていないということです。現代において人は生まれてから学生時代まで「提供される側」として人生を送り、社会人になって初めて「提供する側」に回ります。つまり置かれる立場が180度変わるので、働く前にその準備をしておく必要があるのです。家庭内でのお手伝いから学校での下級生の面倒、部活動や課外活動などを通じて、得る喜びよりも与える喜びの方が、幸福度が高いことを学習しておく必要があります。しかしそのような提供する経験を積んでなかったり、提供したことによる成功体験がなかったり、周りに提供することに喜びを感じている大人がいない子は、提供する側になる「やる気」が育たず、職場がむしろ自分が(お金や支援を)提供されるために行く場所になってしまい、結果として働き続けられなくなってしまいます。
提供する側になる「スキル」の準備が出来ていない
3点目は「スキル」の準備が出来ていないことです。誰かに何かを提供するためには、相手が提供して欲しいレベルの成果を生み出せるスキルが必要です。基本的にスキルは時間をかけることで伸びていきますが、褒められ依存などの一部の子たちは時間をかけることにアレルギー反応を起こしており、能力を伸ばさないまま成長してしまったことで、いざ職場に出ても期待される成果を上げられず結果的に働けなくなってしまいます。
上記3点はどの順番で身に付けても良いですが、社会に出るまでの期間に履修しておく必要があり、この履修が済んでいない方が特性の程度に関わらず働くことが出来なくなってしまっている傾向にあると感じています。
どうすれば働く準備が整うか?
上記3点のような「働く準備」が整うまでにはいくつかのステップが必要になると考えており、職業準備性ピラミッドがそれらを分かりやすく図示してくれています。
職業準備性ピラミッドとは、働くために必要な能力を階層で表したもので、下から「健康管理」「日常生活管理」「対人スキル」「基本的労働習慣」「職業スキル」の5つで構成されています。その土台からの積み上げが出来ている状態というのが、働く準備が整った状態と言えるでしょう。特にその土台の3つの能力の盤石さが働けるかどうかを左右します。
健康管理
健康管理能力とは「毎朝スッキリ起きて15時間連続で活動できる自分を反復継続する能力」です。何時間寝たら昼寝せず動けるのか、何で疲れるのか、何で回復できるのかなどを把握し、1日単位で疲労をリセットして毎日同じ量の活動を続けられる能力と実績が就労には不可欠です。
日常生活管理
日常生活能力とは「一つの作業に対して必要な工程を明らかにして時間内に済ませる能力」です。例えば「洗濯する」という仕事で考えると、どれだけの工程があり本来は何時間で行うもので、自分は何時間でどれだけ出来るのかを把握して常に再現性のある状態にしておく必要があります。
対人スキル
対人スキルとは「自分が得たい未来があるときに、誰に(何に)どのように働きかければ叶うのかを把握し実行する力」です。人は一人では生きられないので、他人に働きかけ得たい未来を叶えるために自分の言動をコントロールする能力が必要です。
実はこの3つを合わせて「自立する力(目的・目標を自分で決めて自分で達成する力)」と表現することが出来ます。この自立が出来て初めて働く準備の半分が叶います。そして残り二つの「基本的労働習慣」と「職業スキル」が、働く準備のもう半分の「協力する力(誰かと共通の目的・目標に向かい、役割分担をして達成する力)」です。この自立と協力が総合的に15歳レベルの60点程度あれば、どこでも働けると考えています。
障害福祉サービスの紹介
これらのサービスは市区町村の支給決定があれば利用できます。
自立訓練(生活訓練)
生活能力向上のための訓練 #自立を身に付ける
※原則2年間
就労移行支援
就労に必要な知識やスキル向上のための訓練 #協力を身に付ける←?
※原則2年間
就労継続支援
働きながら、働く準備や働くための能力を向上するためのサポートが受けられる
※最近は厳しくなりつつある
詳細な訓練内容などは事業所ごとに異なるので、通いたい事業所を見つけて問い合わせることが望ましいでしょう。ただここまでご紹介した通り、大事なのは前述した働く準備が整うことであり、どこかの事業所に通えば働けるようになる訳ではありません。特に福祉は利用者に合わせた定性的な支援になるため、一律なカリキュラムがあるわけでもなく、また業務独占資格による専門性も少ないため、短絡的に「働けないなら福祉事業所で訓練」という第一選択ではなかなか思うような成果が出ないのではないかと感じています。(多くの事業所があたかも通った人のほとんどが安定した就労を手に入れているかのような広告を打っていますので、混乱される親御さんも多いでしょう。良い事業所の見分け方を知りたい方は是非質問してください。)
そして一番大事なこと
大事なことは自分の身の回りのことを自分でやっていく必要があると自覚し、出来る能力を身に付けること、そして家族などの身近な人に何かを提供して喜んでもらえる経験を積むこと、家族全員が同じ目標(みんなで笑顔で過ごす)に向かって協力する経験を通して、働くことへのイメージを持っていくこと。そういった家族とのやり取りで身に付いたことを基本軸として、少しずつ家族以外の人の役に立つイメージに繋げることが、障がいの有無に関わらず誰もが働けるようになる道のりであると考えています。
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以上です!
参加された方からは「生活が仕事につながると思っていなかった」「資格を取れば働けると思っていた」などの感想をいただきました。発達障害だから働けないわけじゃない、家庭で出来る取り組みが将来の自立した生活につながるということを体感してもらえたら幸いです。
今回講義で書かせてもらった板書を掲載しておきます!