拒絶は幻
えさかの訓練を受ける前の私は、仕事中の上司や先輩に「話しかけること」に必要以上の恐怖を抱えていました。声をかけようとするだけで、心臓がざわつき、頭の中では最悪のシナリオが再生される。「今は無理」「あとにして」と言われたらどうしよう。それを拒絶として受け取ってしまって、ずっと怖かったのです。
えさかの訓練でまず大きかったのは、「事実」と「解釈」を分けて見る視点を教えてもらったことでした。
「今は無理」は、忙しいという事実を伝えているだけで、人格や存在を否定しているわけではない。頭では分かっていたつもりでも、身体はずっと“拒絶された過去”に縛られていました。
訓練を通して気づいたのは、私は話しかける前から、相手が拒否する“シミュレーション”を無意識に何度も繰り返していたということです。実際には起きていない出来事に、先に傷ついていた。それが、怖さの正体でした。
えさかでは、「怖いまま動いていい」という体験を少しずつ積ませてもらいました。勇気を出して声をかけても、怒られない。世界は壊れない。何も起こらない。その“なんでもない現実”を、身体で確認していく時間でした。
一度で怖さが消えたわけではありません。でも、「拒絶は幻かもしれない」という感覚が、少しずつ根を張っていきました。怖さをゼロにしてから動くのではなく、怖さを抱えたままでも大丈夫だった、という記憶が増えていったのです。
えさかの訓練で変わったのは、自信がついたというよりも、「怖さに支配されなくなってきた」という感覚です。
話しかける前に立ち止まっても、「また幻を見ているだけかもしれない」と、自分に声をかけられるようになりました。
まだ怖い日はあります。それでも、何も起こらない世界を、私はもう知っています。
それが、えさかの訓練を受けて、私の中で確かに変わったことです。