「上司との関係がつらい」——苦しさの正体
面談テーマ:「仕事でうつ病になった経験を振り返りたい」
「上司と全然話がまとまらなかった」
「自分の意見を言うほど、苦しくなっていく」
——こんな感情を抱えた利用者さん。
「上司に対して、どんなふうに思っていたか」
「上司に何を期待していたか」
「貴方以外の人とは、どう仕事を進めていたのか」
と、その苦しさの正体を丁寧にたどっていきました。
高木さんの次の質問が印象的でした。
「そんな人、あなたの身近にいないか?」
相談者さんが静かに答えます。
「……母親、かも」
見えてきたのは、上司に対して抱いていた感情が、母親との関係での記憶と重なっていたということ。
子どものころに感じていた「わかってもらえない」「話しても通じない」と感じた記憶が、仕事の場で再現されていたのです。
苦しさの正体
話が通じない。何を言っても響かない。どうせ話してもムダ…。
——そんな経験が続くうちに、「自分なんている意味がない」と“存在を否定された”と感じるようになってしまった。
これが、苦しさの正体でした。
上司が自分を否定していたわけではなく、「母に否定されたときの自分」が反応していた。
「これは投影だった」と気づくことが、回復の第一歩になります。
苦しさからの回復
○誤解をほどく
相手の言葉の背景にある意図を確かめる。
「これは私を責めるため? それとも、私のために言ってくれているの?」
「相手が否定的に見えるのは、何かズレがあるからかもしれない」
存在そのものを否定されたわけではなく、意見のズレや伝え方の違いだったかもしれません。
もし、本当に否定されたとしても、それは一時的なもので、100%そうだというわけではないのでは?
否定するとしたら、何か理由がある。それは何でしょうか?
相手の真意を確かめることで、“存在否定”の思い込みから少しずつ自由になっていきます。
○気持ちに寄り添う
「存在を否定されたように感じた」 その理由を整理しましょう。
「なぜそう感じたのか」「本当はどうしてほしかったのか」想いを出していくことで、感情の波が少しずつ落ち着いていきます。
○自分の存在を確かめる
「私はここにいていい」「話が通じなくても、私の意見には意味がある」
——この感覚を取り戻すことが、回復の大切な一歩です。
まとめ:苦しさの裏に隠れているもの
苦しさの裏には、過去の未解決な痛みが隠れていることがあります。
だから、私たちはときどき、昔の傷を今の人間関係で再現してしまいます。
でも、それに気づけたから。
母との関係を癒し、自分自身も少しずつ整っていくのです。