えさか通信

テキストアーカイブ

2021年10月号

「えさか」をもう一つの拠り所に

 自立センターえさか(通称「えさか」)には訓練室が二つあります。

 一つは集合プログラムが開かれ、利用者さん同士が気軽に会話できる部屋、もう一つは対人恐怖がある利用者さんが安心して通所できる部屋です。後者の部屋は、全ての机が壁向きに設置されており、利用者さん同士で会話することは禁止されていますので、他の利用者さんを気にすることなく、安心して通所してもらえます。私自身が利用者だった頃、休み時間に話しかけられることや、視界に入る情報量が多いことが嫌で、疲れてしまうことが多々ありました。

 当事業所は通常の訓練メニューだけでなく、そういった人も安心して来られる場所を目指しています。

 当事業所は通常の訓練メニューだけでなく、そういった人も安心して来られる場所を目指しています。

なぜ「就職」を謳うか

 就労移行支援ではなく、生活訓練を実施している当事業所ですが、あえて「就職に強い」と謳っています。それはなぜか。「おいおいは働けるようになりたい」という想いのある人に「えさか」の存在を知ってほしいからです。

 当事業所では、発達障がいや精神障がいで苦しんでいて、今はなかなか思うように動けず、周囲の人たちに「就労移行はまだ難しい」「就職なんてまだ無理」と言われ、諦めかけている人の「おいおいは働けるようになりたい」想いを大切にして、訓練を行っています。

支援員の経験をもとに

 就職に強い「えさか」ですが、社会復帰するための特別な魔法や秘訣を教えているわけではありません。

 「えさか」の強みは支援員の経験です。私たち支援員自身が、過去に困りごとを抱え、それを乗り越えてきた経験があるからこそ、伝えられることがあります。他人事でも机上の空論でもない実体験を伝えるからこそ、利用者さんに響く支援ができると考えています。家と病院だけが社会の繋がりになっている人にとって「えさか」がもう一つの拠り所になってほしい。それが私たちの想いです。

手段でなく「想い」に耳を傾ける

 相談業務を行っていると、日によって違うことを言う人が少なくありません。同じ人なのに「早く働けるようになりたい」と言う日もあれば「もう一生引きこもって何もしたくない」と言う日もあり、相談を受ける側としては混乱します。しかし本人は、どちらもその時に思ったことを素直に発しているだけなのです。どちらも本心であり、どちらの言葉も心の底にある同じ想いを話しています。

 「働く」も「引きこもる」も手段の一つであって想いではありません。その手段を通じて「どんな自分になりたいのか?」という問いかけをすると、実は両方とも「より良い自分になりたい」という明るい未来を見ていたりするのです。

 当事業所内の支援者研修では「人間であることを信じる」という言葉を学びます。これは「目の前の相手がどんな状態であっても『より良くなるためにここに来ている』ことを忘れてはいけない」ことを表しています。当事業所は手段ではなく、その人の「想い」に耳を傾け、「想い」を叶えるための支援をしていきたいと考えています。

考察の精度を上げよう

 「えさか」は発達障がいの方の生きづらさ改善に向けて取り組んでいますが、今回はその取り組みの元となる「思考力」について、ご紹介させていただきます。

 思考は大きく三つの成分で成り立っています。

 一つ目が受信(インプット)、二つ目が考察(プロセス)、三つ目が表出(アウトプット)です。

 発達障がいの方は、特に考察と表出の発達の遅れにより、困っている方が多いように感じます。

 例えば、上司が怒っていることは分かる(受信)が、どう対処したら良いかわからず(考察)、誤魔化して逃げてしまう(表出)といった感じです。考察が苦手なことで、表出で致命的な選択をしてしまう方が多くいらっしゃいます。特に感情的な判断をしたり、考えず反射的な行動をするケースが目立ちます。「えさか」では、まず論理的思考を学んで考察の精度を上げ、感情的・反射的判断を減らしていくことで、表出面を育てていく訓練を取り入れています。

10月からの訓練内容について

10月から、これまでのアンケートなどを元に、支援員で話し合い、プログラムの全面リニューアルを行います。今の私たちが提供できることは何か、既存のものに囚われずゼロから考え、構想を練りました。

集合プログラムでは利用者さんが集まるからこそ得られる学びを獲得してほしいと思っています。「対人交流を通じて自分自身を見つめ直すことで、社会適応軸を成長させてほしい」という想いのもと「参加して良かった!」と喜んでもらえるようなプログラムを作り上げていきたいです。

Twitterやっています

えさかは管理者や支援者が、twitterを活発に利用しており、利用者さんやセミナー参加者さんと、twitter上での繋がりが深いです。支援者宮崎自身も以前「発達障がい」について、リアルでは共有できない悩みやストレスを、twitterの世界で発信することで、心を保てていた面がありました。毎日更新しているので、気軽に遊びに来てください♪